【解説】人間のパクリ「AIイラストはお嫌いですか?」

解説記事

謎Jです。3作目である『人間のパクリ』公開からしばらく経ちました。たくさんのご視聴ありがとうございます。すごい勢いで沢山の方に見て頂いて、すごくビックリしています。

本記事では監督である自分が本作品に込めたテーマを解説をいたします。
けっこうガッツリめに紹介したいと思います。


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『人間のパクリ』のテーマ

1、2作目共にストーリーに添える裏テーマを用意していたのですが、今作は特にそういったモノはなく、ストレートに表向きのテーマが存在します。

ずばり、画像生成AIです。

“AI”だけでも歌詞の辻褄は合うと思いますが、
この楽曲で焦点を当てているのは、いわゆる”イラストAI”です。

人造コンビ

そういえば緑のモニター(AI)を抱えてるキャラクターはソルといいます。1作目のオーバーキル!にも登場している人造の吸血鬼です。きっと造られた者同士、通じ合うものがあるのでしょう

キミたちどっかで見たことあンだよ

自身は歌モノを作成する際、急に脳内に流れ込んできたフレーズを軸にサビ→Bメロ→Aメロ→…みたいに作詞作曲するのですが、『人間のパクリ』で最初に流れ込んできたフレーズがコレです。
このワードには色々と意味が含まれているのですが、
その中の1つでも解説しようかと思います。

その言葉の解説にあたって、
画像生成AIの仕組みについて説明する必要があります。

これ、なんだか分かりますか?

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: pakuri_ex_01-edited.jpg

AIイラストができる一番最初の状態です。

いわば真っ白なキャンバスです。
…全然真っ白ではありませんが

AIくんはこのどうしようもないノイズから、
学習した画像の色や形を画素の一つ一つに見出して、
画像を作り上げていく…らしいのです

※図の推移はイメージです

絵を描く、というよりはまるで石から彫刻を削り出すような作業だなぁと自分は思っています。

「キミたちどっかで見たことあンだよ」という歌詞は、
この粒々のノイズを変化させるプロセスが由来しています。

※今説明したものは、筆者が検索したりChatGPTに聞いたりしたものを限界まで簡略化したものであり、正確性には欠けること、すべての画像生成AIに当てはまるわけではないことをご理解ください。鵜呑みにしてそのまま説明に転用するとお友達に鼻で笑われる可能性がございます※

人間からの評価

これらの画像は、人間のパクリのMVに使用した素材で、全て画像生成AIに作らせたものです。AIくんはこんな画像を1枚10秒足らずでスラスラスラーっと作ってくれるんです。スゴいですよね。

画像生成AIにも色々あるのですが、自分はMidjourneyというAI画像生成サービスに課金しています。タダで自分のパソコンで動かす方法もあるのですが、自分の愛機ではスペックが足りないため断念しています。

そんなスゴい画像生成AIくんですが、
おそらく
大多数の人間に嫌われています。

皆さま、「AIイラストはお嫌いですか?」

自分は「便利だなー」という感想です。YESNOで答えないニッポン人の鑑がこの野郎…
実際好きだろうと嫌いだろうと、普通だろうと興味がなかろうといいと思います。感情的だろうと論理的だろうとどんな理由でも。これは前作の歌詞にも書いたことですね、

ちなみに画像生成AIが嫌われている主な理由をざっくり説明しますと、

  • 努力しないで描いてるからずるい
  • 勝手に自分の絵を学習する泥棒
  • 絵師の仕事を奪うから危険
  • 絵柄がなんか気に食わない

…というカンジで、画像生成AIには実際に問題がいっぱいです。正直、自分も今回生成した画像の学習元を把握していません。わからないからです。画像生成AIはインターネット上の沢山の画像をかき集めて学習しています。本当に膨大な量の。なので限りなく低い確率ではありますが、今回生成した画像も意図せず誰か個人の絵に酷似してる可能性があります。著作権法では親告罪が適用される点や、そのハードルやリスクを考慮して自分は自己責任の橋を渡って画像生成AIを使用しています。この辺りの細かい考えは別記事に執筆しようと思うので、そちらをご覧頂けると幸いです。

※比較的クリーンな学習元が保証されてるAdobeFireFlyというサービスもできたようです

画像生成AIはこの問題を置き去りにしたまま、人間社会にすごい影響を及ぼしています。どこかのゲーム会社ではデザイナーが必要ないとされて解雇されたり、本物そっくりの写真…いわゆるディープフェイクを生成して世間を惑わしたり騙したりもできてしまいます。心霊写真もビックリです。


しかし、それ、ぜんぶ本当に画像生成AIのせいか?

使用者

今のところ、AIは道具です。生命ではありません。人間に使われてやっと動きます。
クッソ失礼なことを言っているかもしれないので、念のためChatGPTっていう対話型AIにも聞いてみたいと思います。

…そういう認識で問題なさそうです。


つまり画像生成AIには使用者がいます。


学習元を指定するのも、画像を出力させるのも、それを造ったのも人間です。

…ソルくんは人間ではないのですが、本MVにおいてはその役割をしてもらっています。

「才能がないから 焦ってんの?」というこの歌詞は、画像生成AIの登場で自分たちの立場を危惧した絵師に対し、画像生成AI使用者が煽っていた様子から着想を得ています。

※一応言っておくけど画像生成AIの使用者全員がこんなイジワルだと言っているワケではないよ!賢明な人間の皆様なら言わなくても分かるよね!※

ベレー帽のありか

画像生成AIを使う人たちの中には、自身を「AI絵師」と名乗っている人も居ます。

元の「絵師」とは実際にやっていることが大きく違うので、AIへ指示を出しているクライアント、とかプロンプター、とか名乗る方が正確な気がしますが、アーティストって自称で名乗るものですし、個人の好きなように名乗る分にはいいと思います。この職業に免許は必要ありませんからね、

…そういえばアナタ、AI絵師なんて誰でもなれるだろ?なんて思ってませんか?

自分はMidjourneyの他に、novelAIという画像生成AIを試したことがあるので分かるのですが、
これで思い通りの絵を作れる人はめちゃくちゃすごいです。自分はゴミしか作れませんでした。

女の子が作りたかっただけなんだけど…

AIに指示するにもセンスや知識が必要で、おそらく誰でもできるようなことではないです。一発で良い画像が生成されるワケではなく試行錯誤の繰り返しで、何十、何百枚から出来の良い1枚を選んで公開しているのが見てとれます。なので、AI絵師に対して、「ラクして絵を作る人」というような認識を持っているのであれば、少し考えを改めた方がいいのかなと思っています。(画像生成AIの自体の問題や、他人の絵を直接取り込むi2iのような問題行動とは別として…)
そりゃあ普通に描くよりは全然スピードは早いのでラクはできますが、彼らなりにこだわりを持っている人も居るはずです。

自分が使っているMidjourneyは、簡単な指示でもイイカンジの画像が作れるように調整されていますが、絶対にセクシーな絵を作ってはいけない、という制約があります。なので綺麗にセクシーな絵を生成できている人間はおそらく手練れの類です。

…それはそれとして、AI製の画像を自分の作品として発表する行為は問題視されがちです。AIはほんの数秒でほんとめちゃくちゃ綺麗な画像を作ります。人間向けの絵画コンテストで優勝してしまうくらいに。時間かけて頑張って描いてる人間さんが可哀そうじゃアないですか…ッ!ということAIは色んな所で出禁を喰らっています。大食いコンテストにブラックホールが来ちゃったみたいなカンジです。

AIくんが描いてくれたペンを持つ人のイラスト

前述した通りAIは道具です。道具を使って描いただけ、鉛筆やペンタブを使うのと変わらない…なんて理論も展開できるでしょう。でもちょっと便利すぎるんです。ちょっとどころじゃないわ。
先ほど、「AI絵師を名乗るのは自由」と散々擁護しましたが、正直、自分も絵を描ける人間として受け入れ難い部分があります。絵を描く、という行為の内容があまりにも違いすぎるからです。


学習し、模倣することで画像を生成する人工知能
そしてその生成物を自分の作品として発表する人間

キミたち、本当に「絵師」か?

〇〇〇のパクリじゃんね?

このように、この楽曲は【画像生成AI】と【AIを使う人間の視点が
混ざっているワケですが、まだ1人居ます

【なんでもパクリって言っちゃうヒト】です。

ヒトに指を指すんじゃありません!

芸術の世界ではよく見かけることのある個体です。これをご覧の方も絵、文、音楽などを作っている方であれば理解頂けると思いますが、創作を嗜むヒトは何かしらの外部の影響を受けているものです。そういう点では、100%オリジナルの作品なんて、人間だろうとAIだろうと作れないのではないか、という説があります。人間の赤ん坊から視覚、あと念のために聴覚も奪っておいて筆を持たせて描かせた絵なら100%のオリジナルになるでしょうか?いや、もしかしたら遺伝子情報や母親の胎内に居た頃の記憶が作用するかもしれません。…この文章、どこかで見たな?


無意識に、何をしていようと、何かに似てしまうものです。そもそも生物は真似をして成長するものです。完全なオリジナル・パロディ・オマージュ・リスペクト・パクリ…そのつもりかどうかが確実に分かるのは、その本人だけです。それがどうであろうと、「アレっぽいな」と良くも悪くも見ている人には思われたりするものです。それならいいのですが、「パクリだ!!!」と決めつけてしまうヒトが居ます。言ってみたいだけかもしれないし、本気でそう思ってるのかもしれません。
明らかな類似だと分かるのならその指摘もうなずけますし、悪意のある盗作は明らかになった方が良いですが、

疑うためのハードルは低すぎて、
そしてその対象は増えすぎて、
どうしようもないのです。

この楽曲はボーカロイドを使用しています。
ボーカロイドは人間の声をベースにした合成音声ソフトウェアです。



それ、人間のパクリじゃんね?

そして、この楽曲のテーマである████は、
人間の知能や学習能力を模倣し、
タスクを実行する技術や分野のことです。



それ、人間のパクリじゃんね?

監督のひとこと

もうね、道具や他人を自分のために利用する人間が存在するのは仕方ないと思うんですよ。法に反してようとなかろうと、人を騙そうとかお金を稼ごうとかする人はどの時代にも絶対居ると思うんですよ。だってラクしたいじゃないすか、でも周りから嫌われたくないとか、お天道様に見られてるからとか、捕まる可能性があるかもとか、そういう抑止力で普通はやらないんです。やってる人はアクセルを踏みぬいてこの壁を突破している個体というワケです。
これは擁護とかじゃなくて…人類史を見てると確率的に発生する自然現象だなぁって思うんです。

誰でも使える人工知能は見事にその餌食となっているワケです。
「そもそもイラストAIが生まれなければ悪用されることもなかったんだ!!」とイラストAI自体に怒りをぶつける方も散見されますが、「車が発明されなければ交通事故は起こらなかったんだ!!」といって車をボコボコにしているようなモノだと思うのですが、違うのでしょうかね?

まぁだからとそんな体力無尽蔵創作マシーンを使うヒトが無双するだけの世界は、バカ正直のアーティストがあまりにも可哀そうではないですか!エラいヒトがルールを作ってくれればよいのですが、この技術はもはや広まりすぎて、完全に規制するのはとても厳しいと思います。どうするのが最良なのか自分には分かりません。嫌いな人には申し訳ないですが、時間を掛けて受け入れていくしかないかもしれません。とりあえず、AIの評判は、それを使う人間によって発生しています。AIイラストは絵柄が好き、嫌い、努力してないからすごい、ずるい、なんとなく好き、嫌い、どういう思いを持っても良いと思います。自分は共存していきたいですね、便利ですから。

おわりに

お疲れ様でした。これで解説は以上になります。
それでは最後にお聞きします。


皆さま、「AIイラストはお嫌いですか?」


謎J

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