【解説】マッチ売りの転売ヤー「右肩下がり」

解説記事

謎Jです。5作目である『マッチ売りの転売ヤー』公開からしばらく経ちました。予想を上回るたくさんのご視聴ありがとうございます。

本記事では監督である自分が本作品に込めたテーマを解説をいたします。

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『マッチ売りの転売ヤー』のテーマ

転売ヤーは悪いやつ! 転売してるとロクな目に遭わないぞ!!

……と、MV上ではこんなカンジですが、実はもっと違う根底のテーマがあったりします。ある意味間違いではないのですが…せっかくなのでこのテーマについては本解説のさいごでお伝えしようと思います。

タイトルにもなっています”転売ヤー”について、念のため説明をいたします。数年後には死語になっているやもしれませんからね
転売ヤーとは、我々の世界で蔓延っている存在であり、商品を買い取り、また別のヒトに売却することで利益を得る個人または事業者のことです。
”転売=悪いこと”というと、語弊があり、常識的な金額で再度売りに出すような、広い定義ではスーパーマーケットのような卸売業社もそれに該当します。
そのため本記事では、転売=”商品を買い占め、高額で転売する”ものだけを指すことに留意してください。

本作の主人公

みなさまご存じとか思いますが、この作品はハンス・クリスチャン・アンデルセン作『マッチ売りの少女』が元ネタです。大晦日の夜、とある貧しい少女が、全然売れないマッチの火で幻覚を見ながら命を落とすかわいそうなお話です。物語中に主人公の名前すらないのが更にどうしようもなさを感じるどうしようもないお話です。

某フリマアプリとは全く関係がありません。

しかし本作の主人公”メルカ”は原作と似たような境遇ですが、かしこくてたくましい女の子です。
その身一つで転売ビジネスを構想し、成功までこぎつけます。ここで終わればめでたしめでたし……なのですが、転売の延長で違法なビジネスに手を出してしまい、捕まって終わりです。

死ななかった分原作よりはマシだったのかもしれません

“幻覚”

またもや周知の事実で申し訳ないのですが、転売ヤーはクッソ嫌われています。
売れそうなコンテンツを見つけては、商品の販売日に店頭に並び、必要以上の量購入し、高額で出品する。そのため純粋に商品が欲しい顧客にクッソ嫌われています。

しかし、各種メディアの特集を見ていると、そんな転売ヤーかれらにも言い分があるそうです。
「遠くにいて買えない人の代わりに買ってあげている」
「感謝している人も居る」

…だとか

しかし「転売ヤーのおかげで買えた!」「転売ヤーありがとう!」なんて言ってる人をまず自分は見たことがないのですよ。

なのでこれはもしかしたら、自分を正当化するために見ている幻覚なのかな、と思いました。
間奏の光に包まれているこのシーンはそれを表現したものです。

つまり、公式の見解ではこれはメルカの見ている幻覚です。

転売ヤーはどうして発生するんだろう?

みんなからクッソ嫌われている転売ヤーはなぜいなくならないのか?それは規制がされておらずビジネスとして成り立ってしまっているからです。
現代においての転売ビジネスは、フリマアプリや、ネットオークションに蔓延っています。そこの運営が対策をすればよさそうですがほとんどのしていないそうです。なぜなら取引市場が活発であるほど手数料が貰えて運営も儲かるからです。エラい人に言われてる製品だけ渋々規制しているワケです。個人的なただの推測なのですが、もし運営のエラい人が転売ビジネスに目くじらを立てているのなら、とっくに規制が入っていると思います。いやあ!社会ってうまくできてますねえ!
(一応、規定によって違法となるケースはあったりするようです)

ここにきて擁護するつもりではないのですが、転売ヤーが生まれる経緯はそういうところにあるのかもしれません。あまりにもビジネスの土台として成り立ってしまっていること、もっというと、それをせざるを得ない生活環境だったり、スキルを持ってなくて定職につけなかったり、…そういう人間が選ぶ道なのかもしれません。

原作『マッチ売りの少女』なんて開始時点でほぼ詰んでいます。
大晦日の寒い冬、
まったく売れないマッチ、
売り切らないと家に入れてくれない父、
話によってはこ近所のクソガキに靴を奪われて裸足になりもします。かわいそうに!
最期は皆さんご存じの通り、手持ちのマッチで幸せな幻覚を見て死にます。

少し考えたのですが、マッチ売りの少女に、物語としての教訓?があるとすれば、
「どんなにつらい目に遭っても最終的には幸せな場所に逝ける」みたいなものなのかな、と思います。

なーにが幸せな場所に逝けるじゃ!!!凍え死んでBADENDじゃねーか!!!

ここから幸せになる道なんて、急に現れた金持ちに気に入られるとか……そんなご都合展開です。(Wikiによると欧米ではこの改変をされてることがあるそうです。)
ならば倫理を捨ててでも強く生きようとする姿の方が教訓になるだろう?
盗みでも物乞いでもない これはれっきとしたビジネスだ!…と、作詞者として言いたいワケではありませんが…

更生はたぶんムリ

たとえ、この作品を実際の転売ヤーの方々に見せたところで、別に悔い改めようとか、やめようだなんて絶対考えないと思います。これは今のイラストAI絡みの話にも関連することですが、彼らは「犯罪じゃないからセーフ」という一定のラインを守ることで罪悪感を捨て去り、自分を正当化できるプロの集まりです。もし、その行為が規制されたとしても、その次にラクな方法を見つけて次の稼ぎ場を探すでしょう。


すごく極端なことを言うと、この作品は転売ヤーを嫌悪するフツウの人を喜ばせることでしか役に立たない作品なのです。

もしかしたら、次の世代への抑止力くらいにはなれるかもしれません

ここで最初にお預けしていた『マッチ売りの転売ヤー』のテーマを一言で言いますと、

一度落ちたら落ちるしかできなくなる

なのです。

「手を抜く方法を実践してしまっては、もう二度とそれ以上の努力ができなくなるかもしれない。」という、クリエイターとしての自分の中にある恐怖の現れでもあります。この作品は自分に対しての警告の意味もあるのです。

だからパートカラーが多かったり照明にこだわってたりすごい動いてたりで映像にめちゃめちゃ気合が入ってた……というワケでは別になく、これに関しては行き当たりばったりで詰め込みたいものを詰め込みすぎた結果です。

でもこれがある意味、100%の努力なのかもしれません。キャラクターデザインや、作画協力してくれたお二人の手伝いさんのお力もあり、おかげでマッチ売りの転売ヤーは投稿1か月で約70万再生という意味不明なヒットをすることになりました。これから先、もっと上に行けるかは分かりません。ですが、せめて落ちないように、真っすぐ歩くように作品作りを続けていきたいと思います。

監督のひとこと

実は監督は転売に対して容認傾向の人間でした。だって法には違反してないんだもん。エラい人がセーフって言ってるならまあ不服ではあるけどどうしようもないじゃん。みたいなカンジで。…最も好きなポケモンのマスコットが転売されてるのを見るまでは。
それは少し造形が複雑なキャラクターで、商品ビジュアルがお披露目された際にはSNSでトレンドになるくらい軽く話題になった記憶があります。そのため目をつけられたのでしょう。ちなみに監督は当日早起きして遥々発売日に並んで買いにいきました。お目当ての品は、行列の後ろから見ても棚からすごい勢いで取られていくので、もしかしたら買えないかもと不安だったのですが、早く来たおかげか無事手に入れることができました。嬉しすぎてレジに並んでる間はカートすら持たず、手汗ビッシリの手でただそのマスコット1体を両手で落とさないように握りしめておりました。レジのお姉さんに「この子カワイイですよね!」みたいなこと言われて感極まって涙目で「アウッッ…スーッ…デヘ…」みたいな返答しかできなかった記憶があります。クッソ恥ずかしい。
それが転売されまくってると知ったのは無事家に戻ってからです。どうやら早々全国の店頭からもインターネットショップからもお目当ての商品は売り切れていたそうで、それと同時にSNSにてその商品の高額転売が蔓延るフリマアプリのスクリーンショットを見る羽目になりました。自分は手に入ったからいいものの、もしかするとあの行列の中には、高額転売して儲けるために並んでいた人間も混ざっていたのだろうか、そしてその人間のせいで、純粋に欲しかったけど手に入らなかったファンが居たのだろうか……そんなことを考えると凄まじい怒りがこみ上げてきました。なんとも綺麗な手のひら返しです。絶滅しろ!!!転売ヤー!!!!こうして監督は転売絶対許さないマンとなりました。ちなみに、これが『マッチ売りの転売ヤー』を作る動機になったワケではなく、この作品の構想は容認派の頃からありました。かつて容認派だったからこそ生まれた作品だったのかもしれません。

だが今は許さんぞ!!全滅しろ!!!転売ヤー!!!!

※どんなに悪い人相手だからって強い言葉で罵倒していいとは限りません

おわりに

お疲れ様でした。これで解説は以上になります。
軽いお知らせなのですが、しばらくはこのような風刺的な作品はお休みになると思います。他にも構想はあったりするのですが…とりあえずお休みです。

次回からはようやく1期ハッターズの楽曲『怪盗ハッチさん』が投稿されます。Twitterで報告しました通り、仕事の事情で時間を確保できず3月中投稿のところ4月に延期させて頂いております。申し訳ございません。時間を頂いた分、スタッフ一同気合を入れて制作して参ります!

謎J

comment

  1. 例のシーン、転売していても
    喜んでくれる人は居たっていう少しでも
    メルカちゃんが救われてる
    シーンなのかなと思ってたら
    幻覚だったのか……。
    えげつなくって最高です。

  2. 一度落ちたら元には戻れない。すごく心に響きました!メルカちゃんは転売といういわば軽い犯罪が見つかってしまい、捕まってしまいましたが、(作中で何度か「生活がかかってんだよ!」と言っていたので賠償金は払えないとして)牢獄では獄中の仕事をするだけで今までの生活よりも良い生活をすることができる、というのがなんとも皮肉ですね、、、。釈放された後も獄中の生活に戻りたくてまた転売しなければいいですけどね、。

  3. 何が酷いかと聞かれたら一番ひどいのは
    元気いっぱいに100%全力でマッチだけ売ってても死んだだろうなっていう確信が酷い

    次点で私が転売否定派だったんだが(転売が例えこの投稿よりあとに黒 法でアウトだとしても)法より命優先するよなで納得してる自分が酷い

  4. 考えさせられる内容、それを形にできる才能、それを自分のものにした努力。
    めっちゃすごいです。次回作待ってます。

  5. 2番のとこのサビにパウダーあったのは、他の人も言ってるけど、売るだけじゃなくてメルカ自身が使った、てことか。薬物にまで手を出さなければhappy endだったかもな。

  6. 初めて見た作品がこれでした。そこから全曲聴いて今ではどっぷりハマってます。
    キャラデザが皆素敵でもう沼から出られません!なんてことしてくれるんですか!ありがとうございます!(大感謝)

    • ボクもこれが一番最初に聞いたやつ!謎Jさんの曲全部ハマるよね!毎日聞かないと禁断症状が出ます!

  7. あのシーン幻覚だったのか、、、あ、もしかして2番のサビに出てきたメルカの足元にある開けてあるパウダーってメルカがつかったやつか、、?
    毎回解説出してくれるの嬉しい、、、😃次回作楽しみにしてます!

  8. 謎Jさんの解説、毎回楽しんで読ませて頂いてます
    自分なりの解釈と一致している時など、とても人前に見せられない喜び方をしております
    次回作も楽しみにしています

  9. 次回作楽しみです。

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